顧客インサイトを可視化してより深い顧客理解を実現する方法

インタビューを行い顧客の声を収集したり、データを分析して顧客理解に努めたものの、本質的な顧客ニーズを十分に把握しきれていないと感じたことはないでしょうか。
本記事では、顧客インサイトの重要性と、その効果的な収集・分析方法について、事例とともに解説します。顧客インサイトの活用法を理解し、ビジネスの成功にお役立てください。
<目次>
・顧客インサイトとは?なぜ重要なのか
・顧客インサイトを分析する方法
・ドコモ データクリーンルームでインサイト理解を深める
・顧客インサイトに基づいた戦略の実践
・まとめ
顧客インサイトとは?なぜ重要なのか
デジタル技術の進展により、企業は大量の顧客データを取得できるようになりました。しかし、表面的なデータ分析だけでは本質的な顧客理解にいたらず、効果的なマーケティングの立案が困難になっています。
そこで注目されているのが顧客の真のニーズを把握する「顧客インサイト」です。ここでは、顧客インサイトの定義から具体的な活用方法までを解説します。
顧客インサイトとは
顧客インサイトとは、顧客が商品やサービスを選ぶ際に、表面的な理由だけでなく、心の奥底にある本当の動機や価値観のことです。
インサイトという言葉には洞察・発見・見抜くという意味があり、表面的な行動から顧客の本質的なニーズを理解するために、インサイトを捉えることは重要な要素となっています。
まず、動画配信サービスを例に説明します。視聴者の利用目的は「楽しい」「好きな時に見られる」という理由が大半でしょう。
しかし、顧客の視聴パターンを調査すると「日々の生活のなかで気軽にリフレッシュできる時間を確保したい」「人との会話のネタを見つけたい」という深層的な動機が見えてきます。このような本質的なインサイトの理解が、ビジネスにおける効果的なサービス開発の重要な要素になります。
顧客インサイトの重要性
顧客インサイトはマーケティングにおいて重要な役割を担います。動画配信サービスの事例から、ビジネスにもたらすメリットを見ていきます。
たとえば「日々の生活のなかで気軽にリフレッシュできる時間を確保したい」という顧客インサイトからわかるのは、利便性を重視した日常的な利用傾向です。この理解から生まれた主な施策として以下が挙げられます。
- ・新商品開発:ショート動画やシリーズの制作・続き視聴機能の充実
- ・顧客満足度の向上:マルチデバイス対応・ダウンロード機能の提供
- ・顧客ロイヤリティの向上:視聴履歴によるパーソナライズ化されたコンテンツや新作情報の提供
これらの顧客インサイトを活用したアプローチにより、より効果的なサービス展開が実現しています。
顧客インサイトと顧客データの関係
顧客インサイトを得るためには、顧客データの適切な活用が重要です。動画配信サービスでは、視聴パターンの分析を中心とした展開を行っています。
以下のような多様なデータを収集し、分析を実施しています。
- ・視聴履歴と利用時間帯
- ・コンテンツの選択傾向と完了率
- ・利用デバイスの種類と切り替えパターン
- ・コンテンツ間の移動履歴
これらの分析結果から、視聴パターンの把握やコンテンツ提案の精度向上、離脱予兆の察知が可能となりました。例えば、夜間の視聴が多い顧客層には30分程度の番組を推奨するなど、データから得られた知見を具体的なサービス改善に反映しています。このように、顧客データの分析から得られた顧客インサイトは、より効果的なマーケティング施策の立案と実行を可能にしています。
顧客インサイトを分析する方法

顧客インサイトの分析には、定量的なアプローチと定性的なアプローチの2つの方法があります。これらを組み合わせることで、より深い顧客理解が可能になります。
また、効率的な分析のためには、適切なツールの活用も重要です。以下では、それぞれのアプローチと活用できるツールについて詳しく説明します。
定量的なアプローチ
定量的なアプローチは、数値データを用いて客観的な事実を把握する方法です。主な方法として、アンケート調査や購買履歴データの分析などがあります。
アンケート調査では、顧客満足度や商品の使用頻度、改善要望などを数値化して収集します。たとえば、5段階評価や選択式の質問を用いることで統計的な分析が可能となり、定期的な実施によってニーズの変化も把握できます。
購入履歴データの分析では、顧客の購入パターンや商品の組み合わせ、購入頻度などがわかります。たとえば、いつも一緒に買う商品の組み合わせや来店頻度から、おすすめ商品の提案や来店予測が可能です。さらに顧客のグループ分けもでき、顧客それぞれの特徴を把握することができます。
定性的なアプローチ
定性的なアプローチは、言葉や文章、画像などの非数値的なデータを使用し、主観的な要素や背景を考慮しながら研究や分析をする手法です。
主な方法はインタビューやフォーカスグループインタビューです。これによる顧客の生の声や行動観察から、より深い洞察を得ることが可能です。
個別インタビューでは、1対1で詳細な対話を行うため、顧客の本音や潜在的なニーズを引き出すことができます。特に、表面的な回答の背景にある本質的な理由を理解することが重要です。また、顧客の利用シーンや困りごとについて、具体的なエピソードから製品改善のヒントを得ることもできます。
フォーカスグループインタビューでは、複数の顧客が参加する特定のテーマを掲げたディスカッションを通じて、さまざまな意見やアイデアを収集します。参加者同士の対話から新たな気づきが生まれることも多く、製品開発やマーケティング施策の検討に有効です。
データ分析ツールの活用
効率的な顧客インサイト分析には適切なツールが必要です。ここでは、代表的なツールとその特徴を紹介します。
- ・Google Analytics:Webサイトの訪問者行動を分析する無料ツールです。ページビュー数やセッション時間といった基本的な指標に加え、コンバージョン率や流入経路の分析も可能です。また、ユーザーの属性や興味関心カテゴリーなども把握できるため、顧客像の理解に役立ちます。
- ・Excel:データの基本的な集計や可視化に適したツールです。ピボットテーブルを使えば、大量のデータでも簡単にクロス集計や傾向分析ができます。さらに、条件付き書式やグラフ機能を活用すると、分析結果の分かりやすい表現が可能です。
これらのツールを目的に応じた使い分けや組み合わせを行うと、より効果的な顧客インサイトの分析が可能になります。
ドコモ データクリーンルームでインサイト理解を深める

顧客の行動データを活用したマーケティングの重要性が高まる一方で、個人情報保護への配慮も欠かせません。ドコモ データクリーンルームは、この相反する課題を解決し、プライバシーを守りながら深い顧客理解を実現するソリューションとして注目を集めています。
プライバシー保護とデータ活用
ドコモ データクリーンルームは、個人情報を適切に保護しながら、ドコモが保有する1億を超えるdポイントクラブ会員の属性情報や位置情報などの各種データに加え、インテージが保有する消費者の購買行動分析に強みを持つ各種データを活用した詳細な顧客分析が可能なサービスです。
dポイントクラブ会員とインテージが保有するデータは、個人を特定できない形に加工されたデータのみを使用し、位置情報や購買履歴などの行動データは、統計的に処理され、個人の特定につながる情報は完全に排除されます。
さらに、受付けるクエリのポリシーも厳密に管理され、分析結果も統計値としてのみ出力されます。このように、高度なセキュリティと匿名化技術により、企業は安心して詳細な顧客分析に取り組むことが可能です。
精度の高い顧客セグメンテーション
ドコモ データクリーンルームの活用で、従来よりも精緻な顧客セグメンテーションが可能になります。携帯電話の測位情報、アプリ・サービスの使用傾向、アンケート回答など、多角的なデータから推定された趣味嗜好などのセグメントと組み合わせた分析により、自社データだけでは補足の難しい顧客の行動パターンや生活習慣を把握することができます。
たとえば、顧客がよく滞在する場所や、休日の過ごし方、よく利用するサービスなどから、ライフスタイルの特徴が抽出可能です。これにより、実態に沿った顧客セグメントの把握が可能になります。
顧客属性に合わせたマーケティング戦略
ドコモ データクリーンルームで得られた顧客インサイトは、効果的なマーケティング戦略の立案に活用できます。各顧客セグメントの行動特性や価値観を踏まえ、最適な方法でのアプローチが可能です。
また、施設訪問や購買データと組み合わせることで広告反応に留まらず施策後の行動変容まで含めた分析を可能にします。
たとえば、特定の地域での生活パターンに合わせた情報配信や、顧客の興味関心に沿ったコンテンツの提案など、きめ細かなコミュニケーションが設計できます。また、施策の効果測定も細かく行うことができ、継続的な改善を繰り返し、顧客一人一人に寄り添った、より効果的なマーケティング活動が展開できます。
ドコモ データクリーンルームの詳細については、こちらのページをご確認ください。
顧客インサイトに基づいた戦略の実践

顧客インサイトに基づいた実践的な戦略展開について、ヒット商品となったある衣服メーカーの下着を事例に解説していきます。新商品開発・顧客体験・カスタマージャーニーの各側面において、顧客インサイトをどのように活用し、成功へと導いたのかを見ていきましょう。
新商品開発への活用
ある衣服メーカーの下着は、顧客インサイトを商品開発に活かした代表的な成功事例です。「薄いのに暖かい下着が欲しい」「着膨れせずに防寒したい」という顧客の声の表面的なニーズの背後から「暖かさを求めて服を重ねると、自分らしいおしゃれができなくなって落ち込んでしまう」という深い感情的な課題である顧客インサイトを得たのです。
この顧客インサイトを解決するため、繊維メーカーと共同で薄いけれども暖かさを兼ね備えている新素材の開発に試み、開発を成功させました。その後、顧客の声と実際の着用データを組み合わせた検証を重ね、従来の防寒具では解決できなかった本質的な課題に応える商品として進化を続けています。
顧客体験向上への活用
本事例においては、「新しい機能性インナーへの期待はあるが、本当に暖かいのか不安で購入に踏み切れない」という顧客インサイトを発見しました。この心理的な問題を解決し、商品価値への共感を得るため、以下のような施策を展開しています。
- ・店頭に実際の着用感を体験できる試着コーナーの設置
- ・暖かさの度合いを3段階で展開する用途別の商品ライン
- ・実際の使用者による生の声を売り場やSNSで共有
これらの顧客体験により、顧客インサイトで得た顧客の不安を解消するとともに、商品の効果を実感できる購買体験を実現しました。その結果、リピート購入にもつながり、冬の定番アイテムとしての地位を確立しています。
カスタマージャーニー設計への活用
カスタマージャーニーを最適化するには、顧客インサイトを活用することが不可欠です。さきほどの事例では「冬の服装に自信が持てない」という顧客インサイトに注目し、下着におけるカスタマージャーニーの設計で以下のように活用しています。
- ・購入検討段階:気温の変化に合わせた広告展開による防寒具以上の価値訴求
- ・購入時:実際の使用者による体験談のSNS発信を通じた共感獲得
- ・使用後:定期的な満足度調査による新たな要望の商品改良への反映
このような顧客インサイトを基にした施策により、顧客の心理変化に寄り添ったカスタマージャーニーを構築し、継続的な関係づくりを実現しています。
まとめ

顧客インサイトの収集と活用は、マーケティングにおける重要な要素です。定量データと定性データを組み合わせた多角的なアプローチ、継続的な顧客との対話、ツールの効果的な活用が、深い顧客理解につながります。
顧客インサイトは単なる情報収集として終わらせず、製品開発やマーケティング戦略、カスタマーサービスの改善など、具体的なアクションにつなげることで価値を発揮します。顧客ニーズの変化に柔軟に対応しながら、継続的なビジネスの改善が求められています。
最後までご覧いただきありがとうございました。
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